2025年9月4日に第73期王座戦5番勝負第一局が、アマラ・サンクチュアリ・セントーサ(シンガポール)で行われました。
王座2期の藤井聡太王座に対し、伊藤匠叡王が挑む近年なかったタイトル保持者同士のシリーズとなります。
唯一タイトル防衛に失敗した相手でもある伊藤匠叡王に対し、ここは死守したい藤井聡太王座。注目のシリーズです。
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第73期王座戦5番勝負第一局|アマラ・サンクチュアリ・セントーサ(シンガポール)での将棋対局
海外はシンガポールでの開幕局となりました本局、伊藤匠叡王は角換わりにしたかったのですが、藤井聡太王座が角道を止めて後手雁木となりました。
伊藤匠叡王は左美濃を臭わせた囲いから右銀を繰り出し牽制します。
3三で角交換から、たたきの歩でプレッシャーを掛ける藤井聡太王座に対し、いったん受けに回って反撃に出たい伊藤匠叡王という構図で昼食となりました。
昼食メニュー
藤井聡太王座「シーフードラクサとパイナップルジュース」
伊藤匠叡王「シンガポールチキンライス(海南ポークチキン、パンダンジンジャー香るご飯、ピクルスとコラーゲンアワビの鶏スープ添え)」
ラクサとはココナッツミルクベースのカレー風味の麺料理です。
午後に入り藤井聡太王座が積極的な急戦に出ます。
歩での飛車取りを無視し、7七にと金を作る大胆な手に伊藤匠叡王は玉逃げを選択します。
飛車と銀桂交換でと金を配置できるという、後手ペースといえる駆け引きで早くも終盤戦模様です。
午後のおやつ
藤井聡太王座「マンゴーサゴ(ポメロ、マンゴーポッピング添え)、アイスレモンティー」
伊藤匠叡王「ニューヨークチーズケーキフルーツ添え、スイカジュース」
シンガポールならではの両者のデザートとなっています。
伊藤匠叡王も攻められっぱなしでは、急戦での勝利は見えません。
飛車を3筋に展開し攻撃のきっかけをつかもうとしますが、桂打ちで咎める藤井聡太王座。
3筋の2連飛車にも動じず、飛車をひとつ確保してから3九に飛車を据えて、相手玉の逃げ道を封鎖しました。
ここから伊藤叡王の猛攻がはじまり、竜を作ってから角打ちし怒涛の攻めです。
しかし、ここで藤井聡太王座の丁寧な受けを見せます。
一歩間違えると詰みそうな手順でしたが、左辺に玉を逃がすルートを見出し逃げ切ります。
攻め切らなければ寄せられるのは承知している伊藤匠叡王。
自陣の勝ちの見込み無しとみて投了。藤井聡太王座がシンガポールにて1勝を挙げました。
終わってみれば63手の近年まれに見る手数の少なさでの決着となった本局。
後手番で積極的に急戦を仕掛けたのが功を奏した藤井聡太王座。
意表を突かれた伊藤匠叡王は、先手番での優位を生かせなかったのは悔やまれるところです。
ただ、あくまで開幕局であり、藤井聡太王座が1勝を挙げたという事実。
この両者の戦いは簡単には終わらないのは誰もが理解しているところ。
第二局の展開が今から楽しみで仕方ありませんね。